最近、食品添加物としての二酸化チタンに対する危険性が欧州から話題となっており、その問題点について解説していこうと思います。
きっかけ
日本では、2022年10月末現在、二酸化チタンは添加物としての使用が禁じられておりません。
また、色々な性質を持つことからたくさんの用途に使用されています。しかし欧州の欧州食品安全機関(EFSA)では、2021年5月より遺伝毒性の懸念を排除できないとして報告されました。これを受けて欧州委員会は同年10月に使用禁止の措置を取り、2022年度から段階的ではあるものの全面禁止となっています。
日本では、1983(昭和58)年に使用が認可され、現在に至るが今のところ、使用禁止にはなっていません。国立医薬品食品衛生研究所が先のEFSAの報告を受けてラットを用いた各種毒性試験をようやく実施しているので、その結論を待ちたいところです。
酸化チタンの用途と特性
二酸化チタン(TiO₂)の用途は、白色で化学的に安定性がありその性質から大部分を白色顔料として主に使用され、残りは化粧品、食品、飼料、医薬品に使用されています。しかも、白色だけでなく、元の色を隠す作用があるため、ボールペンで書いた文字を訂正する際に使う修正液のように、下地にして他の着色で上書きできる効果を持つため、白色以外の食品にも使用されます。ホワイトチョコレート以外にも使用される場合は主にこの理由です。
ナノ粒子とは
そしてこのTiO₂は使用する場合、小さなナノ粒子のレベルまで小さくして使用されます。ナノとは大きさを表すサイズの名称のことで、1ナノメートルとは、1メートルの10億分の1の大きさ、1ミリの100万分の1のサイズです。ヒトの髪と比べても毛の10万分の1の大きさなので、目で分かるレベルではありません。この大きさまで小さくした粒子をナノ粒子と言います。
ナノ粒子の特性
ではなぜ、こんなに小さくするのでしょうか?それは以下の4つの特性があるからです。
1.体積に対して表面積が大きくなり、化学反応を起こしやすくなる
2.粒子が小さいため、沈殿せずに拡散して長時間混ざり合った状態が維持できる
3.ガラスのように光が透過できる
4.蛍光発光の性質を持つようになる
このように、同じ物質でも肉眼で見ている大きさでは起こらないことがナノ粒子のサイズになると、別の特性を持つようになるのです。
そして、この大きさが生体にもたらす影響とは
1.粒子の大きさにより、他の物質と反応性が高くなり、生体内での免疫機能が反応する
2.粒子が小さいことで、皮膚からの侵入は認められないものの呼吸器や内臓内部に侵入しやすくなり、病原性となりうる
つまり、小さいがゆえに免疫系が異物と見なし、反応することで、体内に何らかの影響を及ぼすことが考えられます。最もよく懸念されるのは発がん性です。
酸化チタンの発がん性
厚生労働省の酸化チタンに対する、各種安全性試験を行った結果の有害性総合評価表においては、「人に対する発がん性が疑われる」と記載されています。
遺伝毒性(変異原性)に関しては「なし」と結論付けているものの、発がん性に関しては、疑いがもたれています。
厚生省での区分は区分2と分類しています。
一方、海外では、世界保健機構(WHO)の下部組織であるIARC(国際がん研究機関)及び、先述のEFSAでは、発がん性の疑いがあると認められる区分2Bに分類されておりますが、これは主として粉塵などの呼吸器から浸潤した場合の結果となります。
しかし、フランスをはじめとして、食品添加物としての発がん性もまた、発がん性の疑いがある区分2Bと区分けし、欧州のEFSAでは、2022年8月より、食品添加物としての使用を禁じています。
つまり、直接的に発がん性のある強い証拠はありませんが、発がん性の疑いがあるので使用を禁止するということです。
日本の消費者はどうすべきか?
日本の厚生労働省では、まだナノ粒子レベルの酸化チタンの安全性評価が出ておりませんが、一般的な酸化チタンでは発がん性の疑いがあるレベルですので、避けたほうが賢明です。
化粧品に含まれる酸化チタンは、皮膚に浸透しないことが認められていますので、大丈夫なのですが、食品に含まれる場合、サイズが小さく、体内で免疫系に影響を与える恐れがあるので、どうしても必要な物でない限り、なるべく避けたほうが良いのです。
酸化チタンについては1日摂取許容量であるADI値が設定されておらず、その使用量は企業にゆだねられています。つまり。国としての基準がないのです。特にホワイトチョコレートは着色料として含まれていることが多いため、一度にたくさんのホワイトチョコを食べるのは、どれだけの酸化チタンが含まれているのかが分かりません。
不安な方は、着色料不使用のホワイトチョコレーもネットショッピングなどでも購入できますので、そちらを利用しましょう。
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