ビタミンの発見
サプリメントの成分を見ると、ビタミンC、ビタミンB1、B2、B12、ビタミンK等が書いてあることがありますが、ビタミンB4、ビタミンFなどの種類がないことに不思議に思うことがあるかと思います。
実はビタミンが発見されたのは、1911年のアメリカで、カシミール フンクが発見し、ビタミン(Vitamine、のちのVitaminB1)と命名したのが始まりと言われています。
つまりビタミンが発見されてから100年程しかたっていないのです。
このころは、まだ、ビタミンとしての系統がなされておらず、フンクはVital amine(生命に必要なアミン)としてVitamineと名付けたのです。
その後、同じくアメリカのマッカラムがネズミを用いた実験で、2種類の成分の分離に成功し、脂溶性AとフンクのVitamineを水溶性Bと名付けました。
さらにドラモンドがレモンからビタミンCを発見し、従来の脂溶性AをビタミンA(VitaminA)、水溶性BをビタミンB(VitaminB)と名付け、現在に至ります。
この時、VitaminCはアミン(アンモニアの水素原子を炭化水素基や芳香族で置換した化合物)でないことから、フンクのVitamineからeを取り、Vitaminと変更しました。
その後、各種のビタミンが発見され、命名されていきますが、なかにはビタミンと違う物質であることが分かり、除外されました。中でもビタミンBは、様々な物質の集合体であることが判明し、枝番を付して、ビタミンB群とすることになったのです。
当時はまだ、赤外分光法や原子吸光法などの分析技術がなく、各成分を分離、特定するのが容易では無かったのです。
ビタミンの種類
ビタミンには水に溶ける水溶性と水には溶けない脂溶性があります。
脂溶性ビタミン…ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK
水溶性ビタミン…ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12およびビタミンC
次にそれぞれについて、もう少し細かく見ていきましょう
脂溶性ビタミン
ビタミンA
ビタミンAは一つの化学物質ではなく、レチノールやレチナール、レチノイン酸からなる三つの化合物の総称として用いられています。ただし、基本構造は同じで、官能基が異なったり、二重結合があるなどの違いなため、枝番は付していません。
主な機能としては、タンパク質の合成の調整、網膜の色に反応するロドプシンの原料として、また、抗酸化作用を持つことが知られています。
ビタミンAは肝臓に蓄積されるので、牛、豚、鶏のレバーを摂取するとよいと思います。そのほか、レバーほどではないものの玉子、バター、チーズ、牛乳などの乳製品にも含まれます。ただし、体内に蓄積されやすいので、過剰摂取やサプリメントを飲む場合には注意が必要です。
なお、ビタミンAの前駆体として、カロチノイドがあります。特に有効とされるのはβ-カロチンで主に緑黄色野菜に含まれています。これらは、必要に応じてビタミンAに変換され、過剰摂取しても問題ないとされています。なので、レバーが苦手な方は、緑黄色野菜や乳製品などを組み合わせて食べるとよいでしょう。
ビタミンD
ビタミンDにも実は枝番があり、D2~D7があります。D1は、前述のとおり発見後、不純物だったため、削除されています。このうち、人間に必要とされるのは植物由来のD2と動物由来のD3の二つです。
カルシウムやリンと結びつきやすく、血中のカルシウム濃度を調節する働きがあります。また、ほかのビタミンと異なり、日光に当たることで、紫外線により、体内でわずかながらも、作ることが可能です。
ビタミンDは魚、乳製品、キノコ類に含まれています。
ビタミンE
ビタミンEはビタミンAのように8つの同族体を持っており、脂溶性としての抗酸化作用があり、体内の脂質酸化防止、老化防止の作用があります。
酸素は、体内に必要ですが、活性酸素(フリーラジカル)などを産み出し、細胞を傷つけることがあり、これを防止するのがビタミンEです。
フリーラジカルは紫外線に当たることで発生し、皮膚の老化を引き起こすので、化粧品に入れたり、食品に添加して、老化防止、酸化防止に役立てています。
また、後述するビタミンCも抗酸化作用がありますが、一緒に取ると、細胞膜はビタミンEが、血中はビタミンCがそれぞれの持ち場で作用するため相乗効果があります。
ビタミンEは植物油に多く含まれ、アーモンド、アボカド、ウナギなどに含まれます。
ビタミンK
ビタミンKにも実は植物由来のビタミンK1、微生物由来のビタミンK2の二種類があります。
ビタミンKは血液の凝固に作用するプロトロンビンに働きかけたり、骨の代謝にも関係しているといわれます。
ビタミンK2は腸内細菌により作られており、抗生物質を長期間飲んでいる人などは腸内細菌が減って、ビタミンKの産生が低下しています。
また、血液抗凝固薬を飲んでる人も注意が必要です。
ビタミンKは納豆やチーズなどの発酵食品、緑黄色野菜、海藻類に含まれます。
水溶性ビタミン
水溶性ビタミンにはビタミンB群とビタミンCがあります。
ビタミンの種類 | 化学名 | 主な機能 |
B1 | チアミン | 糖質代謝の補酵素 |
B2 | リボフラビン | 糖質、脂質、タンパク質代謝の補酵素 |
B3 | ナイアシン | 糖質、脂質、タンパク質代謝の補酵素 |
B5 | パントテン酸 | 脂肪酸の合成・分解 |
B6 | ピリドキサール
ピリドキサミン ピリドキシン |
アミノ酸の代謝 |
B7 | ビオチン | ブドウ糖新生、脂肪酸合成 |
B9 | 葉酸 | DNA合成 |
B12 | シアノコバラミン
ヒドロキソコバラミン |
タンパク質・核酸の合成 |
ビタミンC | アスコルビン酸 | タンパク質合成、抗酸化作用 |
ビタミンB9などは、一般名の葉酸での表示が多いので、こちらでの食品表示が多いことと思います。
ビタミンB1は、不足すると脚気などの症状が知られています。お米の玄米に多く含まれ、精米には殆ど含まれないことで、鈴木梅太郎が日本人として発見し、オリザニンと名付けたことで知られています。
主に、玄米、豚肉、豆類などに含まれます。カップラーメンと精米のおにぎりだけの食事を続けるととビタミンB1の欠乏になるので、注意が必要です。
ビタミンB2は欠乏すると、口唇炎、舌炎などが知られます。乳製品、玉子、魚、緑黄色野菜に含まれます。
ビタミンB3はB2同様に不足すると皮膚や口舌炎などの症状が知られています。肉類、魚類に含まれます。
ビタミンB5(パントテン酸)は動植物性食品に広く含まれるので、偏りのない普段の食生活を送っていれば、欠乏することはあまりありません。
ビタミンB6はアミノ酸代謝、ヘムの合成などに関与しているので、欠乏すると皮膚炎、貧血などを引き起こしますが、腸内細菌からも作られるので、抗生物質などを多用するような環境でなければ、不足することはあまりありません。他のビタミンBと同じように、肉類、魚類、野菜に含まれます。
ビタミンB7(ビオチン)はB5、B6と同様に腸内細菌により作られるので、欠乏はあまりありません。レバー、いわし、ピーナッツなどに含まれていますが、摂取基準も決められていないので、普通の食生活ではあまり気にしなくてもいいでしょう。
ビタミンB9(葉酸)は、ほうれん草の葉から発見されたのが名前の由来ですが、ビタミンB12と関わり合いがあるため、欠乏するとどちらも同じような症状(巨赤芽球性貧血)を起こします。葉酸は野菜以外に肉、魚、豆類などにも幅広い食物に含まれています。
ビタミンB12は先のB9と同様に欠乏すると、貧血のほか、物忘れ、抹消神経のしびれを引き起こすといわれています。貝類や魚、肉などに含まれます。
ビタミンCはコラーゲンの合成に必須のビタミンで抗酸化作用があります。食品にもこの抗酸化作用のために還元型のアスコルビン酸として添加してあることが多いと思います。熱に弱いため、果物や野菜を生やジュースで摂取することをおすすめします。
まとめ
ビタミンは発見されてから、まだ100年程しかたっておらず、いまだに解明されていない部分もあります。
発見当初はビタミンの統計だった命名がなく、発見されても違う物質であることで、削除され、いまの欠番が生じる状況になりました。
ビタミンは人の体内で十分量を生成することができず、生体内代謝に必須の物質であるものですが、一部には腸内細菌の力を借りて、生成することが分かっています。
ビタミンはそれぞれの特性があるので、摂取には、幅広い食品から取り込むことで、体の栄養に役立てていきましょう。
ビタミンB群は様々な代謝の補酵素として働き、欠乏すると生体内代謝を阻害してしまうので、適時摂取し続けることが大事です。
食生活に偏りがあると、ビタミンの摂取に影響があるので、サプリメントや野菜ジュースなどを補助として上手く活用していきましょう。
(参考)
麻美直美、塚原典子「好きになる栄養学」、講談社、2020年
中屋豊、「よくわかる栄養学の基本と仕組み」、秀和システム、2009年
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